最近、オランダに来て、嬉しさ、が、憂いと、混ざっています

こんにちは!現在オランダに留学中のグイドです!!!三週間ほど前から大学の授業が始まりました!新しいことを学ぶ楽しさを享受する反面、自分の語学力の低さや専門外の知識不足を痛感することもあり、一筋縄ではいかない刺激的な生活を送っております。

現在私は学生アパートに住んでいるのですが、ここでは個室の寝室と共同のキッチン、シャワー、トイレが与えられております。今まで私は学生寮のようなところに住んだことが無かったため、ゴミ箱から虫が湧くキッチンやカビ臭いシャワーにはかなり滅入ってしまいました汗。おまけに部屋が半地下なので、昼間でも夕方並みの暗さで、8~9月でも日本の10~11月並みの寒さでした。トランクに詰め込まれた夏服は、来年まで活躍の機会がなさそうです。

さて、当然洗面台も共同なので、歯磨きの際は毎回歯ブラシとコップを持参していくのですが、この時間の使い方が以前の生活から大きく変わりました。日本の実家では洗面台のすぐ近くのリビングの椅子に座って、のんびり新聞や本を読みながら歯を磨いていたのですが、ここにはそのような椅子や物を置ける机が近くにありません。ただ突っ立っているのは勿体ない気がするので、代わりに音楽を聴くようになりました。ボカロではr-906さんという方の「パノプティコン」の世界線の中毒になり、クラシックなら疲れたときの特効薬としてドビュッシーを摂取していたのですが、次第に音楽にも飽きてしまい……新たに聴きたじめたのがAudibleやYoutubeの哲学コンテンツです。
哲学など今までの人生でほぼ学んだことのない私が、なぜこれを選んだかというと、単純です。授業があるからです。本当は哲学よりもジェンダー学の授業を多く取りたかったのですが、留学生は対象となっていないものがほとんどだということが判明し、打つ手がありませんでした。ということで哲学の予備知識ゼロの私でも、オランダで単位が取れるのか!?という壮大な挑戦が始まったわけですが、その第一歩として今は哲学系の本を渉猟しております。その中で私を夢中にさせた哲学者が、ミシェル・フーコーです*1, 2 。

このフーコーという人物は、進学校卒で名誉ある教授職に抜擢されるなど、絵にかいたようなエリート人生を送ったにもかかわらず、複数回の自殺未遂をしたことでも知られています。その根底にあったのは、単純化された二元論の中で差別されるマイノリティ側に分類されてしまう自分-同性愛者、精神異常-こうしたコンプレックスだったと考える方もいます*2。振り返ると、私の人生も常にこうした二元論への内心の抵抗があったように思います。男女ですべてが語られてしまうジェンダーロールの拒絶、厳しい受験競争の中で善悪が分からなくなっていく混迷。私の人生に思い当たることが多かっただけに、フーコーの人生を知ることは、教養として哲学を学ぶ以上の価値を与えてくれました。とりわけフーコーがセクシュアリティやパノプティコンと言った、今まさに私が熱中している話題も取り上げていたという事実が、私を激しく興奮させました。留学のための奨学金の面接でもセクシュアリティ・ジェンダー学の授業が取りたいと明言した私にとって、その授業が取れないことは大きな苦痛でしたが、逆に言うとその授業が取れていたのなら、フーコーの啓示的な人生に出会うこともなかったかもしれません。また、哲学という一見セクシュアリティとはあまり関係のなさそうな学問領域でも、十分自分の興味と関連することが学べるということにも気づけなかったでしょう。

塞翁が馬といいますが、私たちの人生は本当に何がどのような結末をもたらすか分からないものです。進学校卒で名誉ある教授職に抜擢される、一見多くの人の垂涎の的になりそうな人生の中で、フーコーは自殺するほどの地獄を抱えて生きていました。いい学校に行く、そこでいい成績をとる、いい会社に入る、そこで成果をあげる、それが本当にその人の幸せになるかどうかは分かりません。むしろ私たちの人生は、馬から落とされる-つまりそもそも学校でいい成績を取るどころか、希望する授業の履修登録をする資格がない-そうした経験の方が多いのではないでしょうか。しかし、だからこそ私たちはその与えられた状況を必要以上に悲観せずに、いつかポジティブな意味付けが出来るようになる日まで、真摯に生きていくことが大切なのだと思います。フーコーが地獄を抱えながらも必死に生きて、偉大な哲学を生み出したように。

……私が、この薄暗くてじめじめした部屋が、実はドライアイに苦しむ人間への救いであったと気づくように
そして、「ユダヤ人とユダヤ教の歴史」という全く関係のなさそうな別の授業でもフーコーに邂逅するという奇跡を得るように

写真はオランダにあったレインボーロードです!

*1 今を生きる思想 ミシェル・フーコー 権力の言いなりにならない生き方, 箱田徹, 講談社現代新書100, Audible Studio (2023)
*2【構造主義】ミシェル・フーコーの哲学思想について解説【権力の秘密を解き明かせ】, The Rationalist / 夏月,
https://www.youtube.com/watch?v=31-NJua3rOs(2023.09.03入手)

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