こんにちは。3度目のブログ担当のtakumaです。
このアクティブメンバーブログは10数人の持ち回りなので、次回のお当番までのインターバルが3ヶ月あります。
ありますよね?
あるはずなんですが……。
月日が経つには速いもので、あっという間に自分の番になっていました。なんだか年を取るのが怖くなる、そんな弱冠23歳です。
さてさて、今回はかねてよりやってみたかった、私の好きなマンガの紹介をこの場を借りてやってみたいと思います。タイトルは~!
「たとえとどかぬ糸だとしても」
一迅社より現在4巻まで既行されている、tMnR氏(“トモノリ”と発音)による女性同士の恋愛ストーリーです。以下あらすじ。
主人公は高校2年生の女の子“ウタ”。ウタは実兄の隣でウエディングドレスを着て幸せそうに笑顔を浮かべる“薫瑠”を見て、彼女に初恋をしていることに気づく。ウタはその後、両親との仲違いにより、兄夫婦の新居に居候することになり、ウタにとって甘くて、残酷な3人暮らしが始まる。ウタは、薫瑠と一緒に暮らす中で日増しに深く募らせる思いを自分の中で隠し続けていく。この物語は自分の好きな相手が手の届かない存在になってから始まる、もどかしくて切なく、愛になることのない恋の話。
どうでしょう?興味惹かれましたか?
いやはや、私の筆では表現しきれないほど、本作の魅力は尽きないのですが……あえて、
あ・え・て! 3つに絞るとすれば、
①セリフとシャレードの上手さ
②シリアスと絵の可愛さのバランス感覚
③葛藤と遠慮と優しさに包まれた、一貫した切ないストーリー構成
になると思います。(ここから長いですよ、覚悟してくださいね)
①『セリフとシャレードの上手さ』
早い話が本作は名言のオンパレードなのです。一部抜粋しますね。
“最初から線を引かれた片想い、どれだけ想いを募らせても心を切り離した恋だった。こんなに嬉しいことがこんな痛みを生むのなら、知らない方がよかったよ”(1巻)
“薫瑠さんから離れたら楽になるけど、きっとそれじゃ何も残らない”(2巻)
“―ウタちゃんも家族なんだから― それは優しさと温もりに満ちた、戒めの言葉”(4巻)
切ない名言を書かせたらtMnR氏の右に出るものはいませんね。どの言葉も切なく心に突き刺さるものばかりです。ストーリーを踏まえて読んで頂ければ数倍この言葉の重さが感じられます。
さらにtMnR氏に巧いところは、これだけ卓越したセリフ回しの力がありながら、物語が前進する重要な場面ではあえてセリフを使わず、目線や表情、小物や景色の変化(シャレードという技法)だけで表現してしまうのです。多くは語らず読者に想像を任せる、まさに読者を手のひらで転がす軽妙洒脱な描き方に毎度唸ってしまいます。(そして悶えてしまう)
②シリアスと絵の可愛さのバランス感覚
本作は、結婚している相手を好きになったこと、同性を好きになったことの二重のタブーを抱えています。それだけのシリアス要素を抱えながら、絵のタッチや登場人物の性格や仕草がとにかく可愛く、読んでいて癒されます。シリアスと可愛さ、どちらかに偏っている作品はたくさんあるでしょう。しかし、この中庸を行くバランス感覚こそが他作品と一線を画す、本作ならではの魅力なのではないでしょうか?
③葛藤と遠慮と優しさに包まれた、‘徹頭徹尾’貫かれた切ないストーリー構成
本作のキャラクターはみんな優しすぎるくらいに優しいのです。優しすぎるからこそ、思いやりはすれ違って、遠慮は空回って、いつまでも葛藤を自分の中に堰き止めてしまう。そんな哀しくも愛すべきキャラクター達の静かで熱い恋模様が第1話から最新話まで通底しています。シェイクスピアの悲劇のように、読者を切なさの糸で繋いで離さない。葛藤も可愛さもセリフやシャレードの技術も素晴らしいですが、甘美な“切なさ”こそが本作の最大の魅力でしょう。
最後に本作を簡潔かつ的確に表したウタのセリフをご紹介します。長々付き合ってくれてありがとうございます。それでは同好の士が増えることを願っています!(BOOK☆WALKER で1話試し読みできるよ☆)
“もう一度この気持ちを好きになれたらどれだけいいだろう”
“薫瑠さんを好きになったことを、好きになりたいよ”(4巻)
追伸
最近、この「とど糸」を友達に勧めたところ、「あぁ、最近そういうの(LGBT関連コンテンツ)流行ってるよね~でさ~」と言われました。
……流行っているだとぉ!流行り廃りで括ってんじゃねー!とブチ切れました。(心の中で)
とはいえ、実際流行っているからこそ私は百合作品に出合い、ハマり、LGBT文学にも興味が出て、JLGAにおります。私のような協会へのアプローチは決して王道な入口ではありません。邪道もいいとこです。
しかし、当事者として悩むことがなく、身近に性に悩む人がいなかったら(あるいは気付かなかったら)セクシャリティについて考えるきっかけはそう多いものでしょうか?
とはいえ、あくまでエンターテインメントであるコンテンツに、その役割を担わせてもいいのでしょうか?(話が逸れますが、おそらく3.11でも同じことがいえるのでしょう)
その是非は私の中でも決まってはおりません。JLGAのブログで“性をストーリー作りに利用したエンターテインメント作品”を紹介することに目くじらを立てる人も居るかもしれません。不愉快な思いをさせたかもしれません。
しかし、それでもなお、私はエンタメ作品にもきっと理解を深める一定の役割があると信じています。それが良いことなのか悪いことなのか判断はできませんが……。
さて目をつぶって投げたボールはどこに届くのやら(汗)
それでは、またお会いしましょう!
takuma
日本セクシュアルマイノリティ協会のボランティア活動
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