カミングアウトに込めた希望

こんにちは、40代トランスジェンダー男性のおぐです。
自分のセクシュアリティを相手に伝えるカミングアウト。いつ、だれに、なんのためにする?その考え方や選択はほんとうに人それぞれで、これという正解はありません。

ぼくについて言えば、性的少数者の中では広くカミングアウトしているほうだと思います。
家族や友人、職場はもとより、日々の生活の中ですこしお世話になるくらいの方々にも機会をみつけてはカミングアウトしています。
「生まれは女性ですが、生活上は男性なんです」「戸籍上は同性のパートナーがいまして」云々。
多くの人は、内心ではすこし動揺しているかもしれないけど、「あ、そうなんですね」「了解です」と穏やかに応じてくれます。

偏見を恐れ、自分を隠して生活している当事者からみれば、なんで親しくない人にまでカミングアウトしたがるの?されるほうの人に負担をかけちゃうのでは?と疑問を抱く方もいるでしょう。
なぜぼくがそこまでカミングアウトしたがるかというと、それが皆さんへの「ワクチン接種」になると信じているからです。

ぼくは20代半ばの頃、母親にカミングアウトしました。
女手ひとつで苦労してぼくを育ててくれた大切な母ですから、これで親子の絆が断ち切れてしまったらどうしようと思うと怖かったけれど、本当の自分を知ってほしいという願いのほうがまさったのです。

すると母は、「お前が幸せならそれでいいよ」と穏やかに受け入れてくれました。
ぼくは大きな幸せを感じるとともに、こんなにすんなり受け入れてくれたことに驚きもしました。
当時、当事者仲間から聞いていた家族へのカミングアウトの話は、強く責められた、勘当された、などと辛い内容ばかり。だから、受け入れてもらうまでにはきっと時間がかかると覚悟していたのです。

そこで後日、どうしてすぐ受け入れられたの?と母に質問しました。すると、「むかし勤めていた会社でね、同僚にゲイの人がいたの。だからかな、自然と受け入れられたよ」と教えてくれました。
ぼくは、その方に心から感謝しました。あなたと知り合ったおかげで、母はまるでワクチンを打たれたかのように、性的少数者にたいして免疫ができていたのです、と。

それ以来ぼくは、自分の生活に支障がない範囲でなるべくカミングアウトしていこう、と決めました。
ぼくという存在を知ることで、その人は性的少数者にすこし免疫がつくかもしれない。そしていつの日か、その人の身近な誰かが当事者だと知ったとき、その人はすこし穏やかに受けとめられるかもしれない。そう思うからです。

人はよく知らないもの、見慣れないものを恐れ、排除しようとしがちです。知りさえすれば、なにも問題はないと分かるのに。
ぼく自身、子供の頃は街中で外国の方をたまに見かけるとドキドキして、少し怖いと感じたものです。やがて外国の方を目にする機会がどんどん増え、大学で留学生と交流するうちに、漠然とした不安感はいつのまにか無くなっていました。

まだまだ偏見や差別が残るこの社会で、性的少数者がほんとうの自分をオモテに出して生きていくのは難しい。でもそうして隠れたままでいると、この社会ではいつまでも「見えない存在」であり続ける。この悪循環を断ち切るのは、ほんとうに難しいことです。

ぼくのカミングアウトはちょっと極端な事例でしょう。
ただ、当事者一人ひとりが「わたしはここにいるよ」というささやかなメッセージを、自分のできる方法で、できる範囲で、社会に伝えていけたらいいのではないかと思っています。

そうして、性的少数者がだれにとっても当たり前の身近な存在になっていったとき、ぼくたちに対する偏見や差別はきっと無くなっていくはず。ぼくはそう信じています。

JLGA
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